10 8月, 2011

アミ戸物語

以前イラストを描いていたある雑誌の編集部の副編集長Y氏は社長と共にアンチ・エア
コン派で、夏の暑い日でもなかなかエアコンをつけようとしませんでした。編集部は3階建てビルの1階でしたが、植物が生い茂った庭があり、夏は庭に向かって開いているドアから蚊が入り放題。しかも、編集部にはアミ戸がありませんでした。
エアコンつけないから当然暑い。→ドアを開けるしかない。→蚊が入ってきて刺しまくる。という暑くてカユイ最悪のシナリオが展開する、世界一カユイ編集部だったのです。
蚊取り線香も焚いてはいましたが、自然派蚊取り線香なので、血に飢えた蚊たちには
全く効果なしでした。

しかも副編集長Y氏「ボクは、刺されてもあまりカユクないんですよ。」って、それ体質自慢かい?(Yさん、ごめんねー。コレ悪口じゃないのよー。)と思われる発言で、やんわり遠回しにエアコン拒否の姿勢を見せるわけです。他の編集部員も文句を言いません。私だけが暑がりのカユがりなの?と自分の体質を疑ったほどです。(ちなみにY氏、住宅から食までエコライフを実践するエコの鉄人。肉を食べないから蚊に刺されにくい、という説も…。)
当時、イラスト描きながら編集部でバイトもしてたので、私は何度も社長に「せめてアミ戸をつけてください。」と懇願したのですが、社長はお金(出費)と蚊に刺されるのを天秤にかけて、蚊に刺される方を選んでました。

Illustrated  by  obarie
「そんなら、あたしが作ります!!」
と、ある日私はぶっちぎれて、編集部のみんな(6
人くらい)の前でアミ戸作り宣言しました。通販
の担当だったA君が「材料費は経費で落とします
よ。」と言ってくれて、会社の車でホームセン
ターまで乗っけてくれました。私は角材数本と
蚊を通さないくらいの目の小さいアミと釘を買っ
て帰り、編集部員が仕事してる横で、大工と化し
て早速作業開始。

角材を戸の大きさに組んでアミを張り、そのアミを薄めの角材で押さえて釘打って留める、といういたってシンプルな作り。蚊が入らなきゃいいわけだから、見た目は関係なし。私が作業してる間、誰も手伝おうとしないし話しかけてもこない。これって、私の独りよがりな行動なのか…、とたまに心が折れそうになりながらも数時間で網戸は完成。大きく開け放たれたドアの空間にハメ殺しのようにセットして、しばし自己満足に浸りました。だって、その時、誰もほめてくれなかったので…。

翌日からは昔からそうしていたかのように、ドアを開けたら開けた人が網戸をセット
するようになりました。社長やY氏もセットしてましたから、やっぱりあれば使うん
じゃんか、って思っていたら、A君が「いやー、アミ戸作ってもらってホント良かっ
たっスよ。蚊に刺されなくなってラクです。」と、そっと耳打ちするように言ってく
れました。