18 11月, 2012

映画「消えたフェルメールを探して」

〜今週の名画座・キネマ大羽〜

何か、軽妙でありながらも心に残るような、例えばアガサ・クリスティ的な探偵もの映画ないかなー、と思ってツタヤを物色していたら、「消えたフェルメールを探して」というタイトルが目について、借りてきた。
見てみたらドラマじゃなくて、それはドキュメンタリーだった。最初、「なーんだドキュメンタリーかー。」と思って見ていたら、これが意外と面白い。

たまに有名な絵画が盗難に遭ったというニュースを聞いても、今まで「ふ〜ん…。」と特に感慨もなく聞いていたが、この映画を見ると、絵画の盗難の裏には、テロ組織も絡むような政治的な世界があることがわかってくる。
映画の中で主役的な役割をするのが、盗まれた絵画を専門に捜索する実在の探偵。ひどい皮膚癌を抱えながら絵画の捜索に情熱を燃やす姿には、ちょっとグッときた。
捜索を進めるうちに、アイルランドのテロ組織IRAとか、ボストンの街を支配していたバージャーというマフィア(2011年にやっと逮捕された。)の名前もポコポコ出てくる。名画の盗難の影には恐ろしい世界があるのだなー、と実感する。

日本では、政治家への数あるつけとどけの一つとして、銀座の有名どころの画廊が所蔵する絵画が使われていた(今も?)、という話しは聞いたことがある。政治家の中には、ホントに芸術を愛する人もいるのだろうが、献金だと都合が悪いときなど絵画が利用されていたようだ。献金したい人は特定の画廊で絵を買い、それを政治家にプレゼントする。政治家はもらった絵をまた特定の画廊に買い戻させて資金を得る仕組み。当然、画廊も手数料をとる。
本来絵というものは本人が出向いて絵に惚れて買うものであって(そうであって欲しいなあ…)、つけとどけに買うもんじゃない(ま〜、買いたかったら買えばいいけどさ〜。損する人はいないわけだし…。でも…)。
とにかく、ある世界に於いては絵画は紙幣の代わりなのだ。マネーロンダリングと変わりゃしない。

話しは脇道にそれたが、この映画の中では、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれたフェルメールやレンブラントの絵画を取り戻すために、FBIとか元・美術品泥棒やIRAや元IRAの現役議員なども絡んでくるという、なんか下手な推理ものよりも面白い展開になってくる。
絵画が人質のかわりをしているようなものだね。何か大きな政治的駆け引きの場で、盗まれた絵画を返す条件で取引が行なわれるようだ。実際に人間の血が流れるよりはいいのかもしれないが、絵描きのはしくれとしてはやるせない。いちばんやるせないのは、絵を盗んだ人間がその絵が大好きで盗んだ(盗ませた)のではない、ということ。せめて、壁にかけて保存に気を配り、所有者に愛でられていればいいのだが…。

ちなみに、1990年に盗まれたフェルメール「合奏」はまだ戻ってきていない。この映画も最後の方では、かなりヤバイところに足を踏み入れ始めた感じがあって、交渉の結果がわからないまま終わっている。それ以上、映画を撮ることさえ危険だったのかもしれない。


フェルメールを所蔵していた、建物もすばらしいイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館のオフィシャルサイトはこちら。→ http://www.gardnermuseum.org/
ホームページには盗難についても書かれており、絵画を取り戻すための有力な情報をくれた人には500万ドル払う、って書いてある。
http://www.gardnermuseum.org/resources/theft

美術館の名前にもなっている富豪のガードナー夫人が幼い我が子を亡くしてから、その悲しみを癒すかのように情熱をもってコレクションした名作が展示されている。いつか、行ってみたい。
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(お得情報)誕生日にガードナー美術館を訪れる人は、入場料無料。Free On Your Birthday!と
下記ページに書いてある。→ http://www.gardnermuseum.org/visit/offers_and_discounts
あと、イザベラという名前の女性は一生涯無料だそうですが、イザベラっていう日本人はおらんわな〜。
ハーフだったらおるかも知れん…。