10 11月, 2012

映画「シャンドライの恋」

〜今週の名画座・キネマ大羽〜

自分が大切にしているものを、愛する人のためにどれだけ差し出せるのか。
見終わったあとも、その問いかけがいつまでも心に残る映画「シャンドライの恋」。

故郷アフリカで政治活動していた夫を逮捕されたシャンドライは単身イタリアに渡り、音楽家キンスキーの家に使用人として住み込みながら医学の勉強をしていた。
寡黙なキンスキーは、素朴で飾り気のないシャンドライに魅かれていく。
ある日、想いがつのって衝動的に求愛するキンスキー。夫がアフリカの牢獄にいるのだと言ってキンスキーを拒絶するシャンドライ。


そんなことがあった後しばらくして、シャンドライはキンスキーの部屋を掃除しながら、部屋の中の美術品が、ひとつ、またひとつ、なくなっていくことに気がつき始める。
その後も価値のありそうな壁のタペストリーが持ち出され、最後にキンスキーの命にも等しいピアノだけが残る。そして、そのピアノも、ほどなく売られていくのだった。
キンスキーは一体何をしていたのか…?

愛する者のために、自分の大切なものをどこまで差し出せるのか。しかも、何の見返りも求めずに…。
映画を見ながら、後半ずっとそれを考えていた。シャンドライが、自分のためにキンスキーが犠牲を払っていることを知った時、シャンドライの心に愛の火が灯る。
しかし、ふたりが結ばれた翌朝…。

映画館で初めてこれを見た当時、我が身の出来事にも起因して、たまらなく悲しくなって嗚咽してしまった。こんな残酷な結末があるんだろうか、と思いながらエンディングのシーンを見つめた。正確には、結末は語られないまま映画が終わる。
選択肢を全て思い描いてみたけど、どの選択肢を選んだとしても、悲しいじゃないか…。どうするんだ〜、シャンドライ〜!と、ずーっと、映画を見終わって数日間、心の中で問い続けた。
あなたなら、どうする?

愛するってどういこと?と考えている人、必見の一作。たぶん答えは出ないけど…。
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予告編の動画が見つからないので、劇中のシーンを載せました。
美術品がほとんどなくなった部屋をシャンドライが掃除している時、キンスキーが奏でるピアノの音によって二人の気持ちが寄り添い始めるシーンです。
監督は「リトルブッダ」を監督したベルナルド・ベルトリッチ。様々な愛の形を映画で見せてくれる名監督です。