03 3月, 2013

映画「パフューム・ある人殺しの物語」

〜今週の名画座・キネマ大羽〜

1985年に出版され、1500万部という世界的なベストセラーになりながら、著者がなかなか映画化を認めなかったこともあり、20年の時を経てやっと映画化された「パフューム・ある人殺しの物語」。衝撃的でありながら、人間の持つ本質というか本能的なものを、今までにない方法で表現した作品。

パリの汚い魚市場の一角で産み落とされた赤子・グルヌイユは、生まれつき超人的(ほとんど動物的)な嗅覚を持っていた。なめし革職人のもとで働いていたある日、女性が発する香り(体臭)に惹き付けられ、後をつけた彼は誤ってその女性を殺してしまう。そのときにかいだ香りが忘れられないグルヌイユは、香りを抽出し保存できるようになりたいと願い、ある香水店の調香師に弟子入りするのだった。人気の香水を次々と生み出したグルヌイユは、またある晩女性のかぐわしい香りに惹き付けられ、その香りを抜き出して保存したい衝動に駆りたてられる。その衝動に従うことは、即ち再び”殺人者”になる、ということだった…。そして不気味な連続殺人事件が始まる…。
この主人公グルヌイユは、挙動がちょっと動物的でもあり、不気味でコワイ。でも、群衆はもっと強力でコワイ、と思ってしまったのは私だけだろうか。だから、グルヌイユが群衆を逃れて野山を歩いていたときは、内心爽快だったのだが…。

若手ながら名優の片鱗を見せるベン・ウィショー以外には、この複雑な役どころのグルヌイユを演じることはできなかっただろう。加えて、グルヌイユの師匠をダスティン・ホフマンが演じているのも新鮮かつハマリ役。また、皮肉のきいたナレーションが時々入るのだが、D・ホフマンとそのナレーションが映画を暗くしてしまわない効果を発揮している。大人のための残酷なおとぎ話、と表現すれば雰囲気が伝わるだろうか…。

処刑場のシーンは、ある意味、映画史に残る名場面だと思うのだが、これ実写?と最初、我が目を疑ったほど。実写だそうです。スゴイです。
また、ラストシーンも衝撃的。
恐ろしい群衆さえも支配する”香り”が繰り広げるグロテスクなファンタジーをとくとご覧下さい。