29 11月, 2011

逝く準備

認知症で施設に入っている祖母が危篤状態になった、と父が電話をくれた。祖母が逝ったら、葬儀自体は葬儀屋さんが何でもしてくれるとはいえ、高齢の父ひとりでは葬儀にかかる家族がやるべきこまごまとしたことは大変なので、すぐに手伝いに帰ってくるように、と言われた。
父からの電話を切ってすぐ、喪服などを旅行カバンにつめた。明後日から一週間のアクセサリー販売を控えて、販売を今キャンセルすべきかどうか迷っている。

祖母は私が中学生のときに嫁いできた人である。私の父とは6歳しか離れていない。祖父と祖父の妹以外は全て結婚に反対という状態の中に嫁いできたのだから、祖母にとっては針のむしろだったろう。祖母が嫁いで来た日のことを私は憶えている。祖父の家の居間にちょこんと正座していた姿を鮮明に。
祖母が嫁いできたあとも、いろいろなゴタゴタを私は横目で見てきた。
祖母は針のむしろにも負けないくらいの激しい気性を持つ人だが、祖父に対してだけは愛情深く接していた。祖母は食べることに興味がなく料理が下手で、日に三度の食事は作っても栄養管理ができないために祖父を栄養失調にしたこともあるが、それでも祖父は祖母を責めなかった。祖父は祖母を無条件に愛していたということだろう。

祖父が11年前に亡くなってからは、祖母は犬猿の仲だった私の父を頼るようになり、認知症になった今は、私の父のことを祖父だと思っているようだ。

今、私の家族全員が、心の準備をしているところだ。
ひとが逝くタイミングとは、どのようになされるのだろう…。

【作品詳細】category :イラスト(photoshop)