22 9月, 2011

フレデリック・バック展

〜木を植えた男〜

台風が近づく中、東京都現代美術館で開催中のフレデリック・バック展に行ってきた。風が強いと傘も役に立たないだろうと思い、100円ショップで買ったビニール製のポンチョを着てお出かけ。東西線木場駅から徒歩15分くらいの道のりを歩いている時から、風が強くなってきていて、展覧会を見ている間中、美術館の強固そうな建物の外から風の唸るすごい音が聞こえていた。そんな天気のおかげで来館者もまばらで、ゆっくり作品を見ることができた。
2900円のカタログを買うと、カードと虹色鉛筆一本が
もれなく付いてくる。
展示会場に入ってすぐはアニメーション映画「木を植えた男」の映像が流れており、立ったままでよければ全部見れる。移り行く自然の美しさは必見。ずい分前に映画館で見たけれど、何度見ても美しい。展示の最後の部屋には同じくアニメーション映画の「大いなる河の流れ」の一部が流れており、海中でクジラが泳ぐ場面のすばらしさに息をのんだ。
展示作品の量が莫大で、バック氏はまだ健在だけど、回顧展といってもいいくらいの見応えのある量。2歳のときに描いたという鉛筆画もあった(天才!)が、とにかく少年の頃から寝てる時以外は描いて描いて描きまくったんじゃないか、という印象を受けた。アニメーションを手がける前の作品は写実的な絵が多く、その卓越したデッサン力は、プロの絵描きの中でも断トツかと思われる。前半は色も暗めの社会派的な絵や風景画が多いのだが、炭坑や船着き場、ワイナリー、戦争の絵など、一見女性には興味のないような絵でも視線を引き込むような力(構成力のようなものだろう)がある。静止した建物を描いていても、その中で視線が動くのだ。絵に動きがある、ということか…。それが、後半生のアニメーションの仕事をする上での強みになっているようだった。
アニメーションの作品の部屋になると、それまでの写実的な絵と打ってかわって、とても楽しい鑑賞の時間となる。色も華やかで、キャラクター達もかわいい。
「木を植えた男」は5年半をかけて2万枚という気の遠くなるようなセル画の大半をバック自身が描いているという驚きの作品だが、色鉛筆で何度も重ねて描いた優しいタッチは手描きでなくては出せない色合いや雰囲気を持っている。
絵の美しさと、確固とした社会的なメッセージの両方を持ち合わせた数少ない作家といえるだろう。必見の価値あり。フレデリック・バック展は10月3日(月)まで。

東京都現代美術館へのアクセス http://www.mot-art-museum.jp/access/index.html

帰りはJRがほとんど止まっていて、新宿までバスと地下鉄を乗り継いで、新宿では京王線が動くまで同行の友人と夕食をとって時間つぶし。いざ京王線に向かうも、入場制限中で改札口外側のコンコースは人でギュウギュウ詰め。電車に乗るのもひと苦労だったけど、F・バックの作品を見たおかげで心の中に優しい風が吹いていて、イライラせずに済んだ。優しい風、いつまで吹いていてくれるかな。
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東京の他には、来年3月17日〜5月27日まで札幌芸術の森美術館でも開催されます。
北海道旅行を兼ねて、F・バック展を見るのもいいかも…。
同美術館では、いろんなワークショップも開催されているので、観光とアート体験を組み合わせるのも面白いと思います。
参考:http://www.artpark.or.jp/lectures/craft/next.html