11 9月, 2011

空港で

福岡空港で機内持ち込み検査の端っこの列に並んでいたら、「早くしてよ!」と少しとげとげしい女性の声が、すぐ後ろから聞こえました。何事?と思い、私は半身振り返りました。きっと親子なんでしょう、母親らしい女性が私の後ろにいる娘に何か話しかけたいのか、見送りエリアから覗き込むようにしていて、そんな母親を娘は見ようともせず、いら立っていました。
娘が「早く渡してよ!」というと、母親は財布から一万円を取り出し、娘はそれをひったくるように受け取って、ありがとうも言わず、今度は「もう早く行ってってば!!」と追い返し始めました。母親は、叱りもせず怒りもせず、ただ困ったような悲しい顔をして後ずさっていきました。
私は心の中で、”あ、お母さん、ここはお金渡す場面じゃなかですよ〜。ここは一発、叱る場面ですたい!”と念じていましたが念は通じず、殺伐とした別れの場面となりました。

怒れる娘は私と同じ東京行きの便でした。時期的に、夏休みが終わって大学に戻ろうとしてる学生、といったところでしょうか。

”これと同じ別れが、次も100%あるとは限らない。これが永遠の別れになることもあり得るかも。”と、チラッとでも思ってみてほしい、というのは無理な相談でしょうか。

「ありがと。またね。」と2秒で終わるセリフを、事務的でもいいから母親に言ってあげてほしかった、とオーバリーおばちゃんは思うわけです。彼女自身のためにも…。


【作品詳細】
category :イラスト
materials:ペン画+CG