20 5月, 2012

映画「ぼくのエリ」

〜今週の名画座キネマ大羽〜

最近、欧米でバンパイアもののテレビドラマが何本か制作されている。時を超えるファンタスティック性と、バンパイアと人間がどんなに愛し合ってもなくなることのない悲劇性がひとを惹き付けるのだろうか。究極の愛を表現するにはぴったりの素材なんだろうね。

今までバンパイアというと大人の話しばかりだったけど、スウェーデン映画「ぼくのエリ」の主人公は12歳の少年と少女(正確には少女ではないんだが…)。
少年オスカーはいじめられっ子。ある夜、エリが父親らしき男とオスカーの隣りに引っ越してくる。夜の公園で二人の逢瀬が始まる。いじめられて傷つくオスカーを励ますエリ。間もなく謎の殺人事件が起きはじめて…。

オスカーはひたすらカワイー♥くて、エリは12歳なのに老婆のような表情を見せることがある。エリに出会って、生まれて初めて誰かに自分を受け入れられたと感じるオスカー。絶望と哀しみをムーンストーンのような灰色の瞳にたたえるエリ。そんなエリがバンパイアだとわかっても、オスカーは恐れずに受け入れていく。やがてふたりはお互いに離れられない存在となり…。
ちょっと人間離れしたお顔(バンパイアじゃけんのぉ)の血まみれエリが美しい。

登場人物たちは、皆それぞれが孤独だ。エリもオスカーも、オスカーの両親やエリに仕えるホーカンも。孤独だからこそ愛し合うのかもしれないが、愛しても愛しても彼らにはいつまでも孤独がつきまとう。
そしてオスカーがイジメに遭うプールでエリに助けられるとき、哀しみの混ざった安堵感に包まれる。逃避行の始まりを思わせる、わたくし大好きな穏やかなラストシーンは、ある意味とても残酷な未来へのプロローグのようにも見える。せめて、この穏やかな時間が少しでも長く続きますように、と願わずにはいられなかった。

音楽も秀逸。切なくて美しい旋律。サウンドトラック盤買いやした…。今度、泣きたいときはコレ聴きながら泣くわ〜。
メインテーマ:http://www.youtube.com/watch?v=alE6irPWuNo&feature=related

ちなみに本作はハリウッドで「モールス」というタイトルでリメイクされ、ホラーの王様スティーブン・キングから絶賛された。今度はそちらも見てみよう…。
http://www.youtube.com/watch?v=EclCLqV_cDU&feature=fvsr

妙齢女子にとっては、”時”というのは残酷よね、てなことはよくあるけれど、でも一方で”時”がない永遠の世界も残酷なのだ、とバンパイアは教えてくれる。
時の中に生きても残酷、永遠に生きても残酷。そーよ、愛は残酷なのよ。その残酷をどんだけ受け入れられるかがなのヨー!
オーバリーお気に入りの一作。星5つ。(ツタヤで旧作になるので、1週間100円でござった)
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注)バンパイアが「ねえ、入れて」と玄関先に来ても、「入りなよ」って言ってはいけません。言わなければ大丈夫…。招かれないまま入ると、パンパイアは苦しむのです。不思議ですね。
でも、人間同志も同じよね。招かれなければ、ひとの心の中へは入れないんだもの。