01 5月, 2012

後藤さんのお話

先週出かけた講演会「震災に学ぶ」で聴いた震災の語り部後藤一麿さんのお話は、印象深いものでした。録音していたわけでもなく、ただ走り書きのメモをとりながら聴いたので、正確さに欠けるところがあるかもしれませんが、メモになるべく忠実に再構成しました。

後藤さんは全国から寄せられた支援に深い感謝を述べられたあと、下記のようなお話をされました。
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震災で甚大な被害を受け、家など一切のものを失いましたが、今年の南三陸町のワカメは病気もなく、よく育っています。例年は2年かけて育つものが、半年で同じ大きさに育ちました。春になると紫外線が強くなり、ワカメの色が落ちるので、その前に収穫してしまわなければならず、大忙しです。

実は南三陸町では大津波を3.11以前に3度経験しています。明治29年、昭和8年、昭和35年です。私は(昭和22年生まれなので)昭和35年に大津波を経験しました。昭和35年の津波はチリ大地震のときのもので日本は揺れませんでした。でも、それでも津波がきた。今度は三陸沖が震源地だから35年の時と同じかそれ以上のものが来る、という直感があり、外出先から自宅にすぐに戻って家族にただちに高台に避難するように指示しました。位牌を取りに行こうとする妻を叱りつけました。「位牌はまた寺に頼んで作ってもらえばいい。おまえが死んだら、おまえの替わりはないんだぞ!」と。

高台から海を見たら、海に水がなかった。いつもは海水があって渡れない小さな小島に歩いて行けるほど、水が引いていました。昭和35年に見た光景と同じだと思いました。その時は、水が引いたためにたくさんのヒラメがバタバタ跳ね回っていました。チリで地震が起きたことも知らず、町の人たちが海岸に魚を捕りに出た。その人たちが津波にさらわれて亡くなりました。
ああ、大津波が来るぞ!と思いました。間もなく、沖に白い線が見えました。その白い線が陸に向かってどんどんせまってきました。
これまでの津波の経験から、防波堤はありました。防波堤に波がぶつかってしぶきが上がると思いますよね。でも波はぶつかるのではなく、乗り越えてくるのです。
津波は一回で終わるんじゃないんです。家を壊すような津波は合計9回来ました。
結局、私たちの集落80戸のうち、2戸しか残らなかった。

以前から、30年以内に9割の確率でマグニチュード8クラスの地震が来るだろうと言われていました。マグニチュード8というのは、100キロメートルの地殻が動き、またさらに100キロメートルの地殻が動くような規模です。その場合、津波の高さは6〜7mだと言われていました。(今回のマグニチュードは9であり、実際の津波は20mの高さの高台に達していた。)

今回の震災を体験して今思うことは、”津波は物を流し去ってしまうけど、人とのきずなまでは流せない”ということです。元の生活を取り戻すには、最低でも10年は必要です。
それでも、食べるものがあり、雨露しのげる家があり、家族や友人が元気なら幸せなのです。
復興はまだまだ始まったばかりです。地震や津波の被害だけじゃない、原発の被害による被災もあります。東電や政府に「責任とれ!」という声が上がってます。もちろん責任は取るべきですが、ちょっと考えてみてください。電力をたくさん使う生活、つまりなるべく楽して金を得る生活を私たちも望んだのではないでしょうか?望んだために、結果、原発エネルギーが必要とされたのではないでしょうか。

地球上の自然が養える人口は現在の75億人の約半分である35億人だと言われています。ただでさえ養える限度を超えているその自然を、私たちはもっと大切にしなければいけません。

みなさん、被災地に来てください。現状を見に来てください。そして話しを聞いてください。私たちはできるかぎり、ほんとうのことを伝えたいと思っています。
自然災害に対して、防災はあてはまりません。自然災害を防ぐことなんてできない。できることは、自分の命を守ることだけです。そのためにも私たちの経験した話しを聞いてください。
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今回の講演会を企画された足もみボランティアグループの会合で後藤さんがお話をされたときの動画もあります。テーマは「3.11大震災〜幸福の原点とは」。内容は今回の講演会のお話とほぼ同じです。司会は、足もみボランティア後方支援グループ代表の吉田さん。

吉田さんは大田区蒲田で足もみをされている施術者。もともと台湾式の官足法という、痛めの足もみだったけど、その他の手法もいくつか取り入れて、個人個人に合わせて施術してらっしゃいます。
私も調子が悪いとき何度かもんでいただき、劇的な回復をみせたこともありました。何より、吉田さんはお話がおもしろい。話しながら笑って、もまれて痛がる、という感じ。
吉田さんのホームページ
http://ashimomi-factory.jp/