01 7月, 2012

映画「筆子・その愛〜天使のピアノ〜」

〜今週の名画座・キネマ大羽〜

映画の記事に関しては、見たものについて書くのが基本(当たり前)だけど、ちょっと掟破りをして、まだ見たことのない映画についてのご紹介。

なぜかというと、このタイトルにある”天使のピアノ”を実際見てきたからだ。
国立市に日本で初めての知的障害者のための学校・滝乃川学園がある。その広い敷地内にある小さな礼拝堂で行なわれたハープのコンサートに行ってきた。
その礼拝堂に置いてあったのが天使のピアノと呼ばれる、明治時代(1885年製)のドイツ製のピアノで、日本に現存する最古のアップライトピアノ。


明治時代、横浜の居留地にあったドーリング(J.G.Doering)商会というドイツのピアノメーカーが、ドイツから運んで来た部品を横浜で組み立てて作ったというピアノにはふたつの燭台がしつらえられてあり、電気のなかった時代の工夫だろうけど、それがステキなデザインになっている。
その燭台の間に、天使が二人の赤子を両肩に抱いて飛んでいる、というとても美しい絵がある。近くで目を凝らして見てみたけれど、これが絵なのか彫ったものなのかよくわからなかったが、ガラスの裏側から描くガラス絵かもしれない…。

2年程前には、美智子妃が学園を訪ねられて、ピアノを弾かれたそうだ。
ハープの演奏の前に、ピアノがどんな音がするのかを聞かせてくれたが、130年も前のピアノなので、今のピアノの音とは響きが違うが、とても優しい音がした。

この天使のピアノを所有する現在の滝乃川学園は、石井亮一とその妻・筆子によって国立に設立された。石井亮一は祖父が鍋島藩の家老だったという佐賀藩士の家に生まれ、立教大を経てアメリカ留学で障害者教育を学んだ。筆子は大村藩(現在の長崎県)の藩士(後に男爵)の家に生まれ、海外留学を経て3カ国語を操り「鹿鳴館の華」と言われる存在だったという。筆子自身、最初の結婚で3人の子どもを持ったが、二人が障害児、もう一人は病気で幼くして亡くなり、夫も30代で亡くなった後、嫁ぎ先から離縁された。障害者の娘を抱えて、一人で途方に暮れた筆子は娘を託すべく訪ねた滝乃川学園(当時は北区)で園長をしていた石井亮一と出会い、再婚。筆子が82歳で世を去るまでの約40年間、亮一と共にイバラの道のような試練を乗り越えて、知的障害者教育の礎を築いた。

学園の運営などで何度も辛酸を舐め、どんなに貧しくても、筆子は最初の結婚で嫁入り道具として持たされたこのピアノだけは手放さなかったという。

映画「筆子・その愛〜天使のピアノ〜」は、筆子の波乱の生涯を忠実に描いているようだ。主演は常磐貴子と市川笑也。2007年の制作だが、今でも全国のどこかで自主上映的に上映されているらしい。(気づいたのが遅かったので見れないが、先月は中野の映画館で上映されていた。
残念ながらDVDにはなってないようだ。映画の予告編は下記公式サイトで見れる。
http://www.gendaipro.com/fudeko/index1.html
なぜDVDにならないのか知らないけど、記録という意味でDVDになることを望みます。

NHK「その時歴史は動いた」でも石井筆子の一生が見れます。
YouTube画像なので4回にわたってます
part1: http://www.youtube.com/watch?v=ygOcEtmTLxY&feature=relmfu
part2: http://www.youtube.com/watch?v=b_bQnGCVEzE&feature=relmfu
part3: http://www.youtube.com/watch?v=Gd1Zpa9FGS0&feature=related
part4: http://www.youtube.com/watch?v=D4xamQ8j5gU&feature=relmfu
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追記:上映予定
2013年8月23日(金)19:00〜  
東京・なかのZERO にて  当日券のみ/一人1000円
詳細:http://www.gendaipro.com/fudeko/schedule.html