24 10月, 2012

夢に、デルヴォー展

京王線東府中駅が最寄りの、府中市美術館で開催中の「夢に出るボー」…いや、「夢に、デルヴォー」展を見に行きました。
電車の中吊り広告で初めてこのポスターを見た時、おやじギャグですか…、と思ったものです。府中市美術館で働いている友人に、「あれ、ダジャレ?」って聞いたら、「そうみたい…。」との答え。府中市美術館の学芸員さんは、いい味出してます。

さて、画家の名前はポール・デルヴォー。ベルギー人。シュルレアリスムを代表する画家とされています。
私は、デルヴォーの絵に登場する人物に特徴的な漫画っぽいパチクリ目玉が、今までなんとなく苦手でしたが、今回作品を実際に見てみて、苦手な感覚はなくなりました。
むしろ、この脳裏に焼き付くような女性の顔(彼の絵に男性はほとんど登場しない)が普通の写実的な顔になったら面白みが半減するだろう、とさえ思いました。

おもしろかったのが、デルヴォーが電車好き(百年前の鉄ちゃん?)だったこと。絵の中にひんぱんに電車が出てきます。しかも細部まで細かく描き込んであり、車輪や車軸のあたりの複雑な構造もしっかり頭に入ってるかのようでした。コースターに落書きした電車の絵は、落書きの域を越えて素敵でさえあります。
彼の作品の中で、電車は精神的なものを象徴しているのかもしれません。現実世界と幻想世界を行き来することの象徴?精神的な物を運ぶ箱?
柔肌の裸の女たちが歩いている横を、鉄の固まりの電車が通り過ぎて行く。女たちはなぜ電車に乗らないのか?電車はもしかして男性の象徴?
などなど、いろいろ推理したり妄想したりしながら見ると楽しいかもしれません。

絵は、どれも暗い色合いのものばかりですが、シックな色合いとも言えます。これが、大きなおうちの薄暗い廊下なんかに飾ってあったら、夢どころか実際に”出るぞ〜”って感じでしょう。でも、怖くはない。じっと見つめていたい何か不思議な魅力がデルヴォーの絵にはあります。
デルヴォーは奥さんが亡くなると同時に絵を描くのをやめました。奥さんのタムとは、若い時にに一度出会って、親に反対されて結婚を断念し、18年後の50才のときに再会して結婚しました。一途な想いを大切にするロマンチストだったのですね。
暗い絵だけど、物語を感じ愛を感じる。だから見つめていたくなるのかもしれません。

府中市美術館オフィシャルサイト:http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/