18 9月, 2012

歌舞伎で泣いた

歌舞伎を見て、初めて泣いた。
歌舞伎を数回した見たことない初心者の私にとって、歌舞伎は様式美のかたまりのようなもので、所作の中に決まり事があったり、ある程度あらすじを知ってないとついていけなかったり、登場人物の相関関係を追うのに忙しかったり、などの理由でもって、感情を揺さぶられるまでに至らず、能や狂言を見たときのような「一応、日本の伝統芸能は見といたぜ」的な鑑賞しかしてなかった。
だから今日、歌舞伎を見ていて涙があふれてきた自分に自分で驚いたくらいだ。その泣いた演目は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」。
政権争いで左遷された菅原道真の史実がベースになった物語(フィクション)だ。

〜(あらすじ)源蔵は元は道真の家臣であったため、その跡取りの若君をかくまっていたが、菅原家に敵対する藤原時平にそれがバレて、その幼い若君の首をとってくるよう命じられる。若君を守るため、身代わりの子どもを、と考えるが、田舎の寺子屋をやっている源蔵のところには、育ちの良い武家の子などおらず、切って変わり果てた首だといっても藤原方に検分されては身代わりとわかってしまうような子ばかりだ、どうしよう、藤原の家臣達が大勢で首を受け取りにすぐにでもやってくる、どうすればいいんだー、と悩んでいる。そんなところに育ちの良さげな武家の子が母親に手を引かれて寺子屋に入門してくる。年の頃も若君と同じくらいだ、ええ〜い背に腹は代えられず、ということで、母親がよそへ用足しに行ったスキに、その幼い武家の子を断腸の思いで手にかけて首をとり、若君の首と偽って藤原方に差し出してしまう。その首を検分に来た松王丸は以前、源蔵と同じく道真に仕えていた男だったが、今は藤原方に仕えていた。しかし、その首を切られた武家の子は、松王丸が以前仕えていた道真の恩義に報いるために、自ら差し向けた我が子だったのでした(涙、涙、涙〜)。〜


上演中は写真撮影禁止のため、キメのポーズは
適当な記憶で描いてます。
忠義のためなら我が子(あるいは、出会ったばかりの他人の子)をも犠牲にするのかあ〜?!と、その無理矢理なストーリー展開に疑問を感じつつも、涙が勝手にあふれてきて…。松王丸とその女房が息子の亡きがらを引き取りにくるところなんて、観客席のあちこちから鼻をすする音が聞こえ、私も涙を指でぬぐいながら横目で見ると、ハンカチで涙をぬぐっている御婦人方があちこちにいらっしゃった。

今回、叔母が歌舞伎の招待券を知人から2枚もらったとかで誘ってくれたのだが、「いや〜、今日のはよかったねー。招待券もらってよかったねー。」と心から満足した。
市川染五郎が出演の予定だったのが、怪我で休んでいるため、別の配役での上演。どの役を染五郎が演じる予定だったのかは知らないけど、松王丸演じる中村吉右衛門と女房役の中村福助、とても良かったっス。

「菅原伝授手習鑑」は「天衣粉上野初花」(→詐欺師の坊主が殿様相手に金をふんだくろうとする話。)と合わせて、25日まで新橋演舞場にて昼の部で上演中。
チラシはこちら→http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/images/handbill/big/shinbashi201209b.jpg?html
3階席はけっこう空いていたので、当日行っても入れる可能性あり。3階席は3000円と5000円。

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歌舞伎鑑賞の世界にどうやって入っていくかは人それぞれだと思うけど、女性だったら若手俳優のお気に入りを見つける、というのもアリでしょう。
歌舞伎公式サイトのこのページもそのあたりのツボを押さえてのことだろうと思う…。
http://www.kabuki-bito.jp/special/tepco/55/