14 2月, 2015

ロベール・クートラス

時々、絵葉書を送ってくれるMちゃんから、本が送られてきた。
昨年秋にくれた葉書にも、年賀状にもまだ返信してないこの不義理を尽くす私の扉を、彼女はコツコツとたたいて、私が扉を開けると、そこには1冊の本が置かれていた、という風に…。

Mちゃんからの便りには、日常の雑事に気をとられ流されてウロウロしている私の中の錆び付いた引き出しの取っ手に、ちょっと手をかけてくるような感覚がある。

届いた本は画家ロベール・クートラスの作品集(画集)だった。
私は今日までこの画家を知らなかった。タロットカードほどの大きさの紙に、暗い沈んだ色で描かれた、まるで現代とはかけはなれた中世の趣味人が手慰(なぐさ)みに描いたのかと思われるような、でもなんだか懐かしい親しみのある暗さが漂う絵が、1ページに1点ずつ収められている。

本には70枚ほどの絵が収められているが、一夜に一枚ずつ描かれたというその絵は、実際には6000枚もあるらしい。


音のない静かな夜に、画集を1ページずつめくるなんて、何年ぶりだろう。
こんな時間が毎日30分ずづでもあれば、きっと心豊かになれるかも、と思えるような時間だった。

渋谷区の松濤美術館で前期2月8日から2月22日まで、後期2月28日から3月15日までの日程で展覧会が催されている(入場料無料)、と手紙に書いてあった。
明日、行ってみよう。
そしてMちゃんに返事を書こう。
どこか静かな茶房で…。

私は、私の中の錆び付いた引き出しを開けて、その画集をそっと入れ、少しの隙間をのこして、引き出しをしめた。

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●ロベール・クートラス オフィシャルサイト
 http://www.robert-coutelas.com/index.html
●松濤美術館 http://www.shoto-museum.jp/05_exhibition/index.html
●R・クートラス略歴 http://www.robert-coutelas.com/jp/biography/
●R・クートラス関係者(晩年クートラスに寄り添った日本人女性)インタビュー
http://www.robert-coutelas.com/jp/interview/