21 12月, 2012

さようなら、ボタン屋さん

先日、国立駅から5分くらい歩いたところにあるボタン屋さん(正確には洋裁の材料店)に初めて行きました。
アクセサリーの常連のお客様Mさんが、「国立駅近くのボタン屋さんが年内で店を閉めるそうだから行ってみませんか?」と誘ってくださいました。
その店は、普段あまり通らない道にあることもあって、今までボタン屋さんの存在を知りませんでした。

小さい店には壁いっぱいにボタンの箱が詰まっていました。
私は洋裁はしませんので、ボタンを買うのはもっぱらアクセサリーのためです。
リングやピアスにしたらよさそうなボタンがあっちにもこっちにもあります。いつの間にか1時間半もそこに居ました。
アクセサリーの材料を探していることと、素材について知りたい旨をつげると、店主のおじさんはいろいろ説明してくれました。

「真珠のように見えるのは、ポリエステルでできてるんだよ。ナイロンもあるけど、ポリエステルの方がきれいだね。唐草模様のボタンは、水ガラスのボタン。本当のガラスかどうか知らないけど、水ガラスって言われてるんだよ。この木のボタンは黒檀だね。これは革のボタン。ホンモノの革だよ。これは貝のボタンだ。白蝶貝だね。そのワイヤーの細工のボタンは繊細でしょ?名古屋で作ってるんだ。なかなかないよ、こういうの。」などなど、気さくに話してくれます。
もっと早くここの存在を知りたかったな〜。

三日後の今日、また追加でボタンを買いに行きました。
水ガラスのボタンと貝のボタンとドイツ製のステキなガラスのボタンを買い足しました。今日は、店主のおじさんと少しお話しました。このお店を早くに知っていたら、もっと来たのに…、と言ったら、おじさんは「脳梗塞やっちゃったんですよ。もっと続けたかったんですけどね。」と、ご本人も閉店するのは本意ではないようでした。

ゆっくり休養してください、と言うと、「じっとしてるの好きじゃないし、あと10年は続けたかったけど、カラダがね〜、どうにもしんどいんですよ。息子は店を手伝う気はないし…。」と、残念そう。
70になるというおじさんは、奥さんを40代で亡くしたことや、国立で40年間店をやってきたことなど、問わず語りに話しを聞かせてくれました。私は、今日は1時間ほど店に居ましたが、その間も顔なじみな感じの人たちが店に入ってきては「店、やめちゃうんだって?寂しくなるな〜。」とそれぞれに声をかけていました。
商売をひとりで切り盛りするのは大変です。私なんかふた月に一度10日程度出店するだけでも、その間クタクタに疲れるのに、お一人で店を毎日切り盛りするのは病気の身に無理なことは想像にかたくありません。

店主との商品にまつわるうんちく話やなにげない日常会話は、大型店舗ではありえません。アジのあるお店がまたひとつ消えてゆく…。
買ったボタンで作ったアクセサリーをお見せしたいけど、私は明日からしばらく東京を離れるし…。寂しいですが、お体大切に…。
さようなら、ボタン屋さん。