29 1月, 2016

映画「最愛の子」

〜今週のロードショウ〜

子供がいない私でさえ、悲しくて悲しくて泣いてしまったのに、子供がいる人にとっては胸が張り裂けてしまうんじゃないだろうかと思うほどの物語。
そして、これは真実に基づいた映画なのだ。

友達と遊びに出かけたまま帰ってこない3歳の息子を必死に探しまわる両親。
そして、さらわれてきたその子を我が子のように愛し育てた女。
3年後に我が子を探し当てた両親だったが、息子は両親を憶えていないどころか、必死に我が子を取り返そうとする両親を恐れて心を開かない。
親が必死になればなるほど、子への愛は、その子を傷つけていくのだった。

親と子と育ての親との関係は、周囲の人間も巻き込んで、愛と悲しみと憎しみと希望と絶望が複雑にからまっていく…。
一度失ってしまったものを同じ形で取り戻すことは不可能に感じられて、胸が苦しくなる。
複雑にからまったまま進んでいかざるを得ない登場人物たち。
私たちは、どんな状態であろうと生きていかねばならないのだ。
ラストシーンの出来事はさらなる悲しみなのか、それとも希望の始まりなのか…。
涙でにじむ画面をぼんやり見ながら、エンドクレジットが長く続けばいいのに、と思った。
すぐに会場が明るくなりませんように、と。

この映画には結末はない。もちろん誘拐は間違っている。誘拐などあってはいけない。
でも、起きてしまったら…。その先は?
中国で頻発する誘拐は、私たちにとって他人事ではない。
現に北朝鮮に子供を兄弟を拉致された家族は、20年30年経った今でもまだ探し続けている、闘っている。

残酷なほどの現実をつきつけられて、人は何をどう選択してけばいいのだろう?
答えは出ないかもしれないが、考えを止めてはいけません。