19 4月, 2013

軍艦島 in 映画「007 スカイフォール」

〜今週の名画座・キネマ大羽〜

007が映画に登場して50年。
わたくし個人的には、007シリーズの中では最高傑作だとふれて回りたい「スカイフォール」。
半世紀も続いたシリーズの節目として新しい007を感じさせる第23作。
ボンドをダニエル・クレイグが初めて演じたとき、充分新しかったけど、今回ボンドを取り巻く環境が新生ボンドに追いついた、という印象。

すっかり007シリーズの顔になっていたボンドの上司Mの新旧交代、武器開発係の新しいQの登場、MI6の本部が爆破され新しい本部へのお引っ越し(世界大戦中チャーチルが使っていた地下壕という設定)、そしてボンドが「おまえの趣味は何だ?」と強敵シルヴァに問われて「趣味は”復活”すること」と答えたセリフ等々、製作陣の”これからも続くわよー”という意気込みが感じられる。

その意気込みの一つとでも言える初の試み(?)として、ボンドの生い立ちが少し明かされる。ボンドがナゼいつもどこかに痛みにも似た影をたずさえて(D・クレイグ版の場合ですが)ストイックに自分を追いつめて行くのか、が伺い知れる過去である。スカイフォールとはボンドが生まれ育った荒涼とした故郷の地名であり、”天が落ちようとも正義を成就させよ”というラテン語の格言からの引用でもあり、二重の意味を持たせてある。
”復活”が趣味(最高の趣味だね!)なボンドだが、復活するためには今一度、痛みの原点に戻る必要があった、ということか…。

ボンドのアクションも相変わらず素晴らしく、どこまでがD・クレイグでどこからがスタントなのかわからない、もしかして全部D・クレイグがやってんのか、と思いたくなる画像処理も見事。走る列車の上での格闘シーンやイスタンブールのグランドバザール内をバイクで追っかけっこするシーンも愉快。このイスタンブールという場所もロケ地がイスタンブールだった007シリーズ2作目の「ロシアより愛を込めて」へのオマージュになっている(はず)。

褒め始めたらキリがないのだが、ただひとつ残念なのがMを演じてきたジュディ・デンチが次回から見れないこと。Mの交代劇は例えれば、寅さんの妹さくらが倍賞千恵子から別の俳優に変わるようなものである。考えられないでしょ〜よー。
これは、J・デンチが降板したいという意向を制作陣が受けてのことだったが、最初制作側はJ・デンチを手放す気はなかったらしい。他の女優では考えられないMの交代劇は物語の中でひとつのクライマックスとなっている。
今回のボンドガールは前半で早々と殺されてしまうが、真のボンドガールはジュディ・デンチでありましょう。J・デンチとのラブシーンこそ(ありえ)ないけれど、最後はボンドの腕にシッカと抱かれるのであります。
他の女優では考えられない新生Mは男性、というあたりも、どうにか逃げたね。
今まで「Yes,mom.」とMの命令に答えていたボンドは、次回作から「Yes,sir.」って言うんだろうなー。

そしてそして、今回嬉しいのが、ボンドの敵シルヴァのアジトの島として上空からの全景映像が使われた(島の内部シーンはセット)長崎県の廃墟の島・軍艦島の登場。最後のクレジットで”軍艦島・長崎県”とちゃんとそこだけ漢字で出てくる。
高田馬場の名画座・早稲田松竹で見たのだが、こんなに真剣にエンドクレジットを見つめたのは初めて。(「スカイフォール」は今日までの上映。最終上映20時10分開始。お近くの方、万障繰り合わせて、お出かけくださいませね。映画館の大画面で見て〜。)
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「ロシアより愛を込めて」でボンドガールを演じたダニエラ・ビアンキを彷彿とさせるADELEが歌うテーマソング「skyfall」がステキ。グラミー賞6部門受賞。
https://www.youtube.com/watch?v=q-gLRp5bSpw

「007 スカイフォール」は、ツタヤにあります。

軍艦島の写真が見れるサイトはこちら→http://home.f01.itscom.net/spiral/hashima/hashima001.html