16 1月, 2014

映画「空気人形」

〜今週の名画座・キネマ大羽〜

「私は空気人形。心を持ってしまいました。」という、劇中ちょくちょく入る空気人形のつぶやきが心地いい映画「空気人形」。
男が購入した等身大の空気人形が、ある日心を持ってしまう。心を持った”彼女”は、アパートを抜け出し、町を冒険して、バイトもする。歩くことを憶えたばかりの子どものような純真さで、目にするもの全てに好奇心を寄せていく彼女。
でも、心を持つということは、感じること。
キレイだと感じれば、醜いと感じる時もある。嬉しいと感じれば、悲しいとも感じることも。「心」はいいことだけ感じることはできなかった。

ほのぼのとしたファンタジーの世界なのかと思ったら、そこにはやるせないほどの切なさが満ちていた。
ビニール素材の愛らしい彼女は、中身が空気だけの自分を「私は空っぽ」だと思っている。知り合った老人が「最近の人間は空っぽなやつばかりだ。私も空っぽだよ。」と言うのを聞いて、自分と同じ空気人形がけっこう居るのだと勘違いしてしまうのだが、それが映画の終わりの悲しい出来事の伏線になっていくのだ。

登場人物たちがとてもいい味わいを出している。空気人形は韓国女優のペ・ドゥナ、空気人形と暮らす男は板尾創路、空気人形が想いを寄せる男はARATAが演じている。空気人形を作る職人がオダギリジョーで、これはちょっとカッコ良すぎて少々違和感あったけど、彼らの演技でファンタジーの世界が、まるで自然に存在するかのように感じられる。
オダギリジョーに違和感があったのは、彼だけが寂しそうじゃなかったからかもしれないが、この映画の登場人物たちは、皆どこか寂しや生きづらさを抱えて生きている。

悲しい時、寂しい時、それを感じる「心」というものがいっそなければいいのに、と思うけれど、心があるからこの世は美しいのだと、映画を見ながら思いました。
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追伸:辛くても、悲しくても、感じることをやめてはいけません。
痛みを感じることから逃げてしまったら、ボケますよ(マジです)。

予告編はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=W6guDSG-tzg